ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第19回 FDI(外国直接投資)受け入れに熱心な省_フンイエン(Hung Yen)省

製造業がベトナムに進出する際に、どの地域の工業団地を選択するかは重要なポイントとなるが、地域を挙げてFDIの受け入れに熱心に取り組んでいる省があるので、その例をいくつかご紹介したい。今回は立地の良い北部ハノイ近郊のフンイエン省の状況をご紹介する。

1. ロケーション/面積/人口:

フンイエン省はベトナム北部の紅河デルタ地方の中心に位置し、省都はフン イエン(Hung Yen)市でハノイ市から東南に64kmの距離。北はバクニン省、西 北はハノイ市、南はタイビン省、西南はハナム省に接している。面積は926 ㎢。人口は115万人ほど。

フンイエン省の地図
フンイエン省の地図

2. フンイエン省の工業団地:

現在フンイエン省内には11の工業団地:

①第二タンロン(Thang LongⅡ)工業団地、

②フォーノイA(Pho Noi A)工業団地、

③フォーノイB(Pho Noi B)工業団地、

④イエンミー(Yen My )工業団地、

⑤イエンミー2(Yen My Ⅱ)工業団地

⑥ニュークインA (Nhu Quynh A)工業団地、

⑦ニュークインB (Nhu Quynh B)工業団地、

⑧ミンドゥック(Minh Duc)工業団地、

⑨ミンクアン(Minh Quang)工 業団地、

⑩タンダン(Tan Dan)工業団地、

⑪リトゥキエット)工業団地。

リトゥキエット工業団地内には、EcoPark Group (TDH Ecoland JSC) 及び 日系ゼネコンで投資開発会社のJCM(Japan Construction Management)が資本参加をしているエコランド(Ecoland)工業団地があり、2023年から開発がスタートしている。このエコランド工業団地はハノイーハイフォン高速道路沿線のインターチェンジに隣接していて、製造業にとってはハノイ市にもハイフォン港にもアクセスし易い抜群のロケーションである。また、日系企業のJCMが経営に参画しているので、ライセンス取得等の日系企業に対する進出支援サービスが充実している。

 
EcoLand工業団地のパース
EcoLand工業団地のパース

3. フンイエン省の特徴:

フンイエン省はハノイ・ハイフォン・タイビン省など、北部の主要高速道路 のハブ的存在になっていて、同省を東西に横切っているハノイハイフォン高速道路のインターチェンジからは、ハノイ市内まで約30分、ノイバイ国際空港まで約45分、ハイフォン港まで約60分と、空港や港へのアクセスが良い。また、同省を通る102kmに渡る鉄道は、ハノイからフンイエン・ハイズオン省を経由し、ハイフォン港まで輸送が可能で、物流コストの削減が可能である。

4. フンイエン省に進出している日系製造業:

フンイエン省に進出している大手の日系製造業としては、パナソニック・京セラ・ホヤガラス・TOTO・ダイキン(第二タンロン)などがある。この第二タンロン工業団地は住友商事がデベロッパーとして92.2%の出資をしているため、入居企業の大半を日系企業が占めている。

タンロンⅡ工業団地内のDaikin Vietnamの工場
タンロンⅡ工業団地内のDaikin Vietnamの工場

5. フンイエン省の住宅事情:

8社の企業連合であるViet Hung Urban Development and Investment JSCが デベロッパーとなって開発する大規模都市開発事業「エコパーク・プロジェクト」内の分譲住宅事業に野村不動産が参画している。このプロジェクトは 総敷地面積約500ヘクタールに及ぶベトナム国内最大級のタウンシップ開発であり、エリア内には住宅やオフィス、商業施設、学校、公園などの都市機能と、約100ヘクタール超の緑や水辺といった自然が備えられる。また、エコパーク内にはプール、テニスコート、ジム、18ホールの本格的ゴルフコース、映画館などのスポーツ・レジャー施設が備わっている。全街区の完成は2030年を予定している。野村不動産は、このうち4万㎡の敷地に全5棟、総戸数約3,000戸の分譲マンションを建設する事業に参画。2021年下半期に着工し、2024~25年に竣工・引き渡しを予定している。

 
Ecoparkプロジェクトのイメージ画像
Ecoparkプロジェクトのイメージ画像
Ecopark Serviced Apartment
Ecopark Serviced Apartment

6. フンイエン省の教育事情:

前述のエコパーク・プロジェクトでは、インターナショナルスクールの「Chadwick International」、また「British University Vietnam BUV)」、「Tokyo Human Health Science University Vietnam」といった国際的な大学を誘致しているので、外国人駐在員の子弟が通えるような学校も備わっている。

British Vietnam University 開校記念式典
British Vietnam University 開校記念式典
Tokyo Human Health Science University Vietnam
Tokyo Human Health Science University Vietnam

フンイエン省は工業団地の開発ばかりではなく、外資系企業を誘致するための長期的なビジョンの元、外国人駐在員の生活環境、教育環境などにも配慮して、エコパークというタウンシップの開発を行っている。またロケーション的にも、ハノイ市内にもハイフォン港にも高速道路を使えばアクセスが良く、ロジスティック関連のコスト削減が可能である。更にフンイエン工業団地管理委員会の支援によりジャパンデスクが設置され、日系企業が進出しやすい条件が整いつつある。   

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。