ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第22回 フロン回収事業について

ここ数年世界中でSDGsが話題になっているが、今回はベトナムでフロンガスの回収事業をスタートしたMZVINAの古岡社長に、ベトナム進出の切っ掛けや当地ベトナムでの事業内容についてお話を伺った。

1. MZVINA社がベトナムでフロンガスの回収事業をスタートした切っ掛けは?

2024年1月1日より、ベトナムでフロン法がスタートするという情報を開業(2023年6月)の3年前に聞き準備を行っておりました。アジア諸国では、フロン類に関する法律が初めて施行されるという話を伺い、アジア諸国でもフロン類の回収・再生を進めGHG排出量削減並びに地球温暖化防止に貢献したいと考えていました。

 また親会社であるエム・ゼットには6年前より技能実習生を数名受け入れており、彼らの活躍の場を母国に戻っても提供したいと思案していました。そんな中、フロン法の話もあり、ベトナム進出を一気に進展させた次第です。

 

2. 当地で事業をスタートする際に、一苦労した点は?

ライセンスについてです。まず、ライセンスの多さに驚きました。どんな事業を行うにしてもライセンスを求められERC(企業登録証明書)の追加申請を何度も行いました。また今回弊社が行うフロン再生事業のように、初めての事業やライセンスに書かれていない事業については、個別でベトナム政府・各省や工業団地局への相談や説明・理解されるまで大変時間がかかりました。しかし日本の環境省やパートナー企業様のバックアップも頂きながら短期間で取得できることは異例と聞いておりますし、それだけベトナム政府も期待して頂いている証だと思っております。

フロンガス回収作業

3. 工場を現在のバリアブンタウ省に決定した理由は?

パートナー企業様の存在が大きいです。ハノイやホーチミン周辺の工業団地を回り、フロン再生事業を始められる工場を探していました。そんな時、親会社と取引のある銀行様より埼玉県からベトナムへ出店されている企業様を紹介して頂き打合せ致しました。その企業様はアルミの再生事業を行っており、開業までのご苦労を生かした進出に関するコンサル業やベトナム国内における人脈、弊社との今後の連携も視野に考慮した結果、その企業様の敷地を一部借用し、今後の事業展開で有利になると考え、バリアブンタウ省に出店致しました。

 

4. MZVINA社の当地での事業の概要は?

事業内容は3つあります。①フロン回収事業、②フロン集積・再生事業、③フロン回収工具類販売事業、です。フロン回収事業は、現場で機器を撤去もしくは更新される場合、フロン回収を弊社が請負、現場でフロン類を専用の容器に回収致します。回収した際は、引取証明書を発行し機器所有者様へお渡し致します。これは、ベトナム政府に年次報告する為に必要な書類となります。フロン集積・再生事業は、空調設備業者様等が回収したフロンを、弊社に処理依頼を委託して頂き、処理を行います。万が一、分析の結果再生できないと判断された場合は、提携している破壊処理業者へ再委託致します。最後にフロン回収工具類販売事業ですが、フロンを回収する為に必要な日本製の機器や工具類を販売しております。

 
MZVINA 古岡社長

5. 2024年5月30日から施行された環境保護法関連の政令06などで、従前と異なる点と、罰則規定で一番注意しなければならない点は?

ベトナムにおけるフロン法は、先進国などで既に実施されている法律などを上手く取り入れています。しかし、今まで回収を行っていない国である為、戸惑う文言やまだ整備されていない箇所も存在しています。特に注意すべき点は、回収作業です。回収する為の回収機や容器等に一定以上の安全装置や能力を備えている事、回収する為には技術者が必要である事などが規定されています。日本でもフロンは高圧ガスで、一般の人の取扱いは禁止しており、ベトナムでは周知が行き届いていない為、誰でも回収出来てしまい事故に繋がっている事例や罰則規定政令45第46条3項も適用されてしまいます。是非回収等を依頼する際は、技術規則QCVN76:2023を理解している業者様へご依頼下さい。

先般のグテーレス国連事務総長の発表によると、2030年までのSDGsの達成目標に対して、現状では17%しか達成されていないそうだ。日系企業のこのような活動がもっと注目されて、SDGsの達成に貢献できることを期待している。  

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。