ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第11回 工業団地及び製造業関連の英語の略語

ベトナムで製造業を始めるために色々な工業団地を調査する際に、英語の略語(Abbreviation)が使用される場合が多いので、今回は工業団地あるいは製造業で一般的に使われている略語を中心にご紹介したい。

1. RBF (Ready Built Factory):レンタル工場

 日本語では「レンタル工場」と言うが、外国ではRBF(建築された工場)という言い方が一般的である。

工場の箱は既に建築されていて、内装工事をして機械を導入するだけで、即操業が可能なレンタル工場のことを表している。

BWID社が建設したVSIP Hai Phongのレンタル工場

2. GFA (Gross Factory Area) : 工場の総面積 / GLA (Gross Lease Area): 総賃貸面積    

レンタル工場の場合は、工場面積以外にも「事務所」や「トイレ」などの面積 も賃料の対象になるので、GLA (Gross Lease Area)=「総賃貸面積」という言い 方をする。このGLAに㎡当たりの賃料単価を掛けたものが、実際のレンタル工 場の月額賃料になる。

3. BTS (Build to Suite):オーダーメイドのレンタル工場

クライアントのリクエストに応じて、工業団地のデベロッパーがオーダーメイドの工場を建設費も一旦立て替えて建設し、その建設費と土地代を5年~10年のリース契約にして支払ってもらうスキーム。

ベトナムでは数年前から導入された比較的新しいスキームであるが、ヨーロッパやタイなどでは、以前から行われていたスキーム。

ha(ヘクタール)単位の大きな工場や倉庫を建設する際に、初期投資を抑えるためにこのスキームを利用する企業が少なくない。

BWID社がBTSで建設したShoppee(Eコマース)の倉庫

4. EIA (Environmental Impact Assessment):環境申請

ベトナムで製造業が操業する際には、内装工事を始める前に、このEIAをベトナムの環境省に申請しなくてはならない。申請のためには「製造プロセスチャ―ト」、「製造工程で使用する薬品のリスト」、「廃棄物の内容とその量」などの詳細なデータを当局に提出しなければならない。この作業は煩雑なので、通常はその申請を代行しているエージェントに委託するのが得策だ。ここ数年はベトナムムでも環境保護に対する意識が高まっているため、メッキや染色工程のある業種にはEIAが下りないケースもある。

5. EPE(Export Processing Enterprise):輸出加工企業

輸出加工企業とは「輸出加工区内で設立され、創業している企業」または「工業団地内または経済区内で操業し、製品すべてを輸出する企業」を指す。EPEとして認定されると輸出入の関税が免除されるメリットがあるが、認定条件が厳しいのと、将来的にベトナム国内での販売をしたい時に、ステイタスを変更するのに数カ月間操業停止をしなければならないので、現在では余りメリットがないと考えられている。レンタル工場の場合は隣接する工場があるので、EPEとして認定されるための条件を満たすのが容易ではない。

6. MRP(Material Requirements Planning)資材所要量計画

MRPとは生産管理の手法の一つである「資材所要量計画」のこと。あらかじめ完成品の生産計画を立て、これをもとにして製造に必要な資材の量と納期を逆算して発注・生産する仕組みで1960年代に編み出された。資材の在庫の過不足をなくし、仕掛品や製品の在庫を削減できるという利点があり、製品のリードタイムを圧縮できる。

7. ERP(Enterprise Resource Planning)企業資源計画

工場向けの生産管理の手法を発展させて、企業全体を「経営資源」という観点から総合的に管理する企業資源計画のこと。製造・生産、在庫、調達・購買、人事・給与、財務・会計など、企業が持つ経営資源(人・物・金と情報)を最大限に活用するために、その資源の配置を最適化し、経営の効率化を図る仕組みであり、上記のMRPを発展させたものとして1990年代に考案された。

8. SCM(Supply Chain Management)サプライチェーンマネジメント

原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、販売、配送までの製品の流れ(サプライチェーン)を統合的に管理し、それぞれの部門や企業が情報を共有しあうことで、サプライチェーン全体の効率を最適化する経営手法のこと。情報をリアルタイムに交換することで、資材や製品を必要な箇所に必要な数量だけ供給できるようになれば、余分な在庫を削減し、コストを引き下げ、リードタイムを圧縮できる。

9. FRP(Fiber Reinforced Plastics)繊維強化プラスチック

繊維により強化した樹脂のこと。代表的なものはガラス繊維で強化したGFRPであるが、樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂など)と強化剤(ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維など)の組み合わせより、さまざまな特性が得られる。いずれも高強度、軽量で、金属のように錆びることなく、対候性・耐食性や断熱性に優れる、造形性が良い、安価などの特徴を持つ。

FRPを使用した新幹線線路防護柵

海外で製造業に携わる方には、このような3文字略語を覚えて頂きたい。

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。