ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第16回 FDI(外国直接投資)受け入れに熱心な省_ロンアン(Long An)省

製造業がベトナムに進出する際に、どの地域の工業団地を選択するかは重要なポイントとなるが、地域を挙げてFDIの受け入れに熱心に取り組んでいる省があるので、その例をいくつかご紹介したい。今回はロケーションが便利なホーチミン市近郊のロンアン省の状況をご紹介する。

1. ロケーション/面積/人口:

ロンアン省は東はホーチミン市とタイニン省、北はカンボジアのスヴァイリエン州、西はドンタップ省、南はティエンザン省に接している。

州都タンアン市はホーチミン市から南に47km。面積は約4,500㎢、人口は138万人ほど。

ロンアン省の地図を挿入
赤い部分がロンアン省

2. ロンアン省の工業団地:

現在ロンアン省内には17の工業団地:

①ドゥックホア1(Duc Hoa 1)

工業団地②ドゥックホア2 (Duc Hoa 2)

工業団地③ドゥックホア3 (Duc Hoa 3)

工業 団地、④スエン A(Xuyen A)工業団地、

⑤タンドウック(Tan Duc)工業団地、

⑥ フーアンタン(Phu An Thanh)工業団地、

⑦ビンロック(Vinh Loc )工業団地、

⑧ トゥアンダオ(Thuan Dao)工業団地、

⑨ニュットチャン(Nhut Chanh)工業団地、

⑩ホアビン(Hoa Binh)工業団地、

⑪フックロン(Phuc Long)工業団地、

⑫カウチャム(Cau Tram)工業団地、

⑬タンキム(Tan Kim)工業団地、

⑭ロンハウ(Long Hau)工業団地、

⑮ロンハウ3(Long Hau 3)工業団地、

⑯カウカンフックドン(Cau Cang Phuoc Dong)工業団地、

⑰タンドウック(Thanh Duc)工業団地がある。 ロンハウ工業団地内には6階建てのビル型レンタル工場があり、軽工業で小規模(100㎡~)の工場をお探しの製造業にはお勧めだ。

 
ロンハウ工業団地、及び6階建てのビル型レンタル工場の写真を挿入
ロンハウ工業団地内の6階建てビル型レンタル工場

3. ロンハウ省の特徴:

ロンハウ省は、ベトナム南部メコンデルタ12省の中で、最もホーチミン市に近く「メコンデルタの玄関口」と呼ばれている。メコンデルタはメコン川河口の湿地帯で、米を始めとする穀倉地帯として知られている地域で、原材料を調達しやすいため食品関連の製造業が多く進出している。しかしながら、埋立地も多く地盤が若干緩い所も多いので、軽工業は多く進出しているが、重工業には向いていない。

4. ロンアン省に進出している日系製造業:

ロンアン省に進出している主な日系製造業としては、サッポロ(ドゥックホア3工業団地)、イノアック(ロンハウ工業団地)などがある。

サッポロベトナムの写真を挿入
サッポロ・ベトナムの工場

5. ロンアン省周辺の教育事情:

ロンアン省は日本人学校やインターナショナルスクールがあって日本人居住区となっているホーチミン市7区に隣接しているので、7区に住んでロンアン省   に職場があれば、駐在員の子弟を学校に通わせるのにも、駐在員自身の通勤にも非常に便利である。

ホーチミン日本人学校
ホーチミン日本人学校

6. ロンアン省周辺の生活環境:

1) 住宅事情:

 ロンアン省の工業団地に勤務する日本人駐在員は、ほぼ全員がホーチミン市7区に住んでいる。通勤時間が30~40分と他の工業団地と比較して短い通勤時間で済むので、通勤のストレスがほとんどない。また、7区は日本人ばかりでなく欧米人や韓国人などの外国人も多く居住しているので、クレセントレジデンス、スカイガーデンなどの外国人用のサービスアパートも多く、選択の余地がある。

2) レストラン事情:

 7区には多くの日本・韓国・西洋料理のレストランがあり、外食には多くのチョイスがあり楽しめる。シンガポールのクラークキーを参考にしたという川沿いのレストラン街には各国料理のレストランが立ち並び、在住外国人の憩いの場所となっている。また競争が激しいため、レストランのクオリティも高い。

ラーメンで有名な「一風堂」も7区にホーチミン2号店を出店している。

3) 買物事情:

 7区にはクレセントモールやロッテマートという大型ショッピングセンターがあり、外国人向けの店舗も多く入っている。また路面店でも日本や韓国の食材を販売している店や、ワインショップ、ベーグルショップなどの欧米人をターゲットにした店なども多いので、買い物には困らない。

クレセントレジデンス
クレセントレジデンス
一風堂
一風堂
在住外国人に人気のクレセントモール
在住外国人に人気のクレセントモール

7. まとめ:

ロンアン省はメコンデルタに近く、食品関連の製造業が原材料を調達しやすいという利点があり、また家族帯同の日本人に人気のあるホーチミン7区からの通勤に便利ということで、多くの日系製造業が進出している。また、日本や韓国の中小企業向けの数百㎡からの小ユニットのレンタル工場がある工業団地も複数あり、中小規模の軽工業にはとても良い条件がそろっている。また駐在員向けの住居や、バラエティに富んだハイクオリティの日本食レストランや洋食レストラン、イオンモールなどの日本人駐在員にとっての生活環境も整っている。更にこの地域のベトナム人は温厚な性格の人が多く、ワーカー同士の争いや労働争議などは、他の地域に比べて比較的少ない。年中温暖な気候もあり、質の良い労働者が集まりやすく、毎年3~5%の労度人口が増加しているので、製造業の進出にはかなり整った環境と言えるのではないか。

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。