ベトナムの
工業団地事情
文/齊藤公
第18回 FDI(外国直接投資)受け入れに熱心な省_バリア・ブンタウ(Ba Ria - Vung Tau)省
製造業がベトナムに進出する際に、どの地域の工業団地を選択するかは重要なポイントとなるが、地域を挙げてFDIの受け入れに熱心に取り組んでいる省があるので、その例をいくつかご紹介したい。今回はエネルギー資源が豊富なホーチミン市近郊のバリア・ブンタウ省の状況をご紹介する。
1. ロケーション/面積/人口:
バリア・ブンタウ省はホーチミン市から東南に約120キロに位置し、北をド ンナイ省、西をホーチミン市、東をビントゥアン省と接していて、南は南シナ 海に面している。省都はバリア(Ba Ria)市で、面積は約1,990 ㎢、人口は103 万人ほど。
2. バリア・ブンタウ省の工業団地:
現在バリア・ブンタウ省内には15の工業団地:
①ミースアンB1・コナック (My Xuan B1 – Conac)工業団地、
②ミースアンB1・ティエンフン(My Xuan B1 – Tien Hung)工業団地、
③ミースアンダイズオン(My Xuan Dai Duong)工業団地、
④ミースアンA1(My Xuan A1 )工業団地、
⑤ミースアン A2(My Xuan A2)工業団 地
⑥フーミー1 (Phu My 1)工業団地、
⑦フーミー2(Phu My 2)工業団地、
⑧フーミー3(Phu My 3)工業団地、
⑨カイメップ(Cai Mep)工業団地、
⑩チャウドウック(Chau Duc)工業団地、
⑪ドンスゥェン(Dong Xuyen)工業団地、
⑫ロンソン (Long Son)工業団地、
⑬ダットドー(Dat Do)工業団地、
⑭ダバック(Da Bac)工 業団地、
⑮ロンフオン(Lomg Huong) 工業団地がある。
上記の内フーミー3工業団地は、日越両政府の合意に基づき2014年に「特別 工業団地」として認可され、日鉄物産が窓口となり、日系企業の進出をサポートしている。
3. バリア・ブンタウ省の特徴:
バリア・ブンタウ省はホーチミン市から車で約2時間の距離にあり、ビーチ リゾートとして有名で、多くのホテルやシーフードレストランが存在する。同 省沖には大規模な油井とガス田が多くあり、ベトナム全国の埋蔵量のそれぞれ 9割強、2割弱を占めていて、多くのエネルギー関連企業が進出している。また、南部経済拠点の一つとして、多くの大型港湾を有し、港湾数は全国で 最多。積載量10万t以上のlコンテナ船の寄航が可能で、海外港湾を経由する ことなく輸出できるため、ヨーロッパやアメリカなどを結ぶ直行便が運行して いる。
4. バリア・ブンタウ省に進出している日系製造業:
バリア・ブンタウ省に進出している大手の日系製造業としては、イナックス(ミースアンA)、ビナ・キョウエイ・スチール:共英製鋼、三井物産、伊藤忠 丸紅鉄鋼、ベトナム鉄鋼公社の合弁会社(フーミー1)、ベトナム・ニッポ ン・スチール・パイプ(フーミー2)、ニトリ、ベトナム・ジャパン・ガス(フーミー3)などがある。
5. バリアブンタウ省の教育事情:
a) Ba Ria-Vung Tau College of Technology:
ベトナム人の技術者を養成するための職業訓練校で、日本政府のODA資金援助も受けていて、東京都立六郷工科高等学校や、イギリス・ドイツ・オーストラリアなどの大学とも提携して、溶接・自動車技術・電気・金型などの海外の専門家の指導も受け、卒業生を地元の日系製造業や日本国内の製造業にも送り込んでいる。
インターナショナルスクールとして5歳児からの幼児教育や、初等・中等教育を英語で行っており、地元に住む日本人や欧米人の子弟が通っている。
6. バリアブンタウ省の生活環境:
a)住宅事情:
ホーチミン市内と比較すると3~4割賃料が安く、100㎡(2LDK, 3LDK)程度のサービスアパートやアパート(日本で言うところのマンション)をUS$1,000前後で借りることが可能。
前述のようにビーチリゾートが近いため、新鮮なシーフードを安価で堪能できるレストランが海岸線に目白押し。日本食レストランも数店
バリアブンタウ省はホーチミン市から最も近いビーチリゾートとして有名であるが、石油やガスなどの天然資源に恵まれているのでエネルギー関連企業の進出が多く、港湾施設も充実しているので輸出がメインの製造業には好都合だ。また、域内に職業訓練校もあるので、エンジニアの採用にも困らない。また、駐在員にとっては物価もホーチミン市内と比べると格段に安いので、家賃や食費が節約できビーチリゾートもあるので気分転換も容易にできる。
齊藤公(さいとうひろし)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。