ベトナムの
工業団地事情
文/齊藤公
第21回 ベトナムにおける中古機械の輸入について
1. 日本からの輸出
まず日本での作業として、通常の売買、また海外子会社への移設においても、当該中古機械が安全保障貿易管理の規制対象であるかどうかを確認し、該非判定の上、経済産業省で必要な手続きを行う必要がある。
2. 輸入禁止品目、規制品目
ベトナムでは貨物によって輸入が禁止、または規制される中古機械がある。輸入禁止品目の対象でない中古機械のうち、HSコード84類、85類に属する中古設備については、これまで、科学技術省の通達23号が適用され、原則として製造から10年を超えず、安全・省エネ・環境保護に関するベトナムまたはG7(先進7ヵ国)の基準に適合している場合のみ輸入が認められると規定されていた。2019年には、これに代わり、4月19日付の首相決定18号が適用されることになり、一部の年数制限が緩和されて、金属加工用旋盤や鋳造機などは製造から20年以内のものまで対象が広がった。また、年数制限を超過した中古機械・設備を特別に輸入する際の手続きが明示され、科学技術省が輸入の可否を文書回答するまでの期間が15営業日以内に設定されることとなった。上記の安全・省エネ・環境保護に関する基準のほか、中古機械・設備と中古生産ラインで輸入基準が別々に設けられ、これらの要件が満たされていることを指定の鑑定機関が発行した鑑定書等で証明する必要がある。
ベトナム政府は中古機械・設備・生産ライン(★注1)の輸入を定めた2019年4月19日付の首相決定18号を公表し、製造から10年を超える(★注2)中古機械・設備は輸入を制限されてきたが、6月15日から一部の年数制限が緩和された。
それまでは中古機械・設備・生産ラインの輸入は、粗悪な中古設備の流入を防ぐため、科学技術省の通達23号に基づき、原則として製造から10年以内で安全・省エネ・環境保護を満たす場合のみ認められてきた。一部例外として、投資プロジェクトに付随する場合や特別承認を得た場合は輸入できるが、具体的な手続きなどが明示されておらず、日系企業らから改善を求める声が上がっていた。
通達23号に代わって適用される今回の首相決定18号では、安全・省エネ・環境保護に関する基準(★注3)のほか、中古機械・設備と中古生産ラインで輸入基準が別々に設けられ、これらの要件が満たされていることを指定の鑑定機関が発行した鑑定書等で証明する必要がある。
中古機械・設備の輸入は、1部の年数制限が緩和され、金属加工用の旋盤や鋳造機などは製造から20年以内のものまで輸入対象が広がった。また、年数制限を超過した中古機械・設備を特別に輸入する際の手続きが明示され、科学技術省が輸入の可否を文書回答するまでの期間が15営業日以内に設定されるなど、企業にとっては手続きの迅速化や予見可能性の面で期待を持てる内容となった。
中古生産ラインの輸入は、年数制限が撤廃された一方、設計値に対しての出力もしくは効率の残存能力が85%以上、かつ、エネルギーなどの消費率が15%以下という数値基準が設けられた。併せて、同ラインの技術がOECD加盟国内の3カ所以上で使用されていることが要件に加わった。
今回の改正で手続きが明確になった面があるものの、運用面で問題が起きる可能性もあるため、案件によっては科学技術省や税関当局に十分に事前確認をしたうえで輸入申請することがリスク回避につながる。
(★注1)HSコード84類と85類の製品が対象。生産ラインとは、同時に稼働するために連結された機械・設備。
(★注2)製造からの年数は、輸入年から製造年を差し引いて算出される。例えば、2008年1月製造、2018年12月にベトナムの港に輸入される設備の場合は、10年となる。
(★注3)ベトナム国家技術基準(QCVN)、ベトナム標準(TCVN)、G7(日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの7カ国)の各国もしくは韓国が定める基準のいずれかに適合していること。
3. 品質検査について
当該貨物がベトナムの品質法(05/2007/QH12)に規定された工業規格に照らして品質認証を求められる場合には、新品/中古の別なく輸入者がベトナムの法令に従った手続きを行う必要がある。貨物検査証明の手続きは輸入側の責任で、船積み前に検査証明の要否を確認してもらうことが必要となる。船積み前貨物検査の業務は日本海事検定協会等で対応している。
4. その他留意点
中古機械については通常、輸出されたら性能保証やアフターサービスは行われないが、部品供給については別途取り決めるケースもある。据付や再組立てに手間のかかる機械・設備の場合、検収条件や外国契約者税について、事前に輸出側と確認しておくことが必要だ。
齊藤公(さいとうひろし)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。