ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第23回 最低賃金の改定

ベトナム政府は今年6月30日、最低賃金に関する政令74号(74/2024/ND-CP)を公布した。地域別に設定している最低賃金を改定し、7月1日から月額で平均6.0%引き上げた。改定は2022年7月1日に平均6.0%引き上げて以来2年ぶりとなる。ベトナム政労使で構成する国家賃金評議会が政府に提案した内容に沿う決定となった。

地域1(ハノイ市、ハイフォン市、ホーチミン市など)は現行から6.0%増の496万ドン(約3万1,248円、1ドン=約0.0063円)、地域2(ダナン市、バクニン省など)は6.0%増の441万ドン、地域3(ハナム省、ハイズオン省など)は6.0%増の386万ドン、地域4(地域1~3以外)は6.2%増の345万ドンに改定した。

時間単位の最低賃金も改定した。地域15.8%増の23,800ドン、地域26.0%増の21,200ドン、地域36.3%増の18,600ドン、地域46.4%増の16,600ドンとなった(添付資料 表1参照)。

日系企業の賃金上昇、毎年平均5%以上

ジェトロの「海外進出日系企業実態調査」によると、在ベトナム日系企業は2020年以降、平均5~6%台の昇給を毎年実施している。政府による最低賃金の改定は2020年1月~2024年7月の4年半で3回、1回当たりの引き上げ率は5.5~6%であることから、日系企業の賃金改定率は最低賃金の改定率を大きく上回っているといえる。

なお、複数の日系企業へのヒアリングによると、新型コロナウイルス禍前と同様に、1月に賃上げを実施しており、今回の最低賃金改定に合わせた賃上げは見送る企業が多い。2020年までベトナム政府は最低賃金の改定を年初に実施しており、日系企業もそれに合わせて年初に賃金調整をしていた。新型コロナ禍の影響で政府の改定時期は不規則化したが、多くの日系企業は従来どおり1月を改定時期とし、変更しない方針だ。なお、既に改定後の最低賃金以上の額を支給していれば、賃上げする義務はない。

ワーカーが退社時に荷物検査を受けている様子。(自社製品の無断持ち帰りをチェック)

2024 年7月1日から最低賃金の引き上げ

 

地域

月額最低賃金 (単位:VND/月)

時間額最低賃金 (単位:VND/時間)

1地域

4,960,000

23,800

2地域

4,410,000

21,200

3地域

3,860,000

18,600

4地域

3,450,000

16,600

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。