ベトナムの
工業団地事情
文/齊藤公
第26回 FDI(外国直接投資)受け入れに熱心な省_ハナム(Ha Nam)省
製造業がベトナムに進出する際に、どの地域の工業団地を選択するかは重要なポイントとなるが、地域を挙げてFDIの受け入れに熱心に取り組んでいる省があるので、その例をいくつかご紹介したい。まずは、最近日系企業の進出が顕著な北部ハノイ近郊のハナム省の状況をご紹介する。
ロケーション/面積/人口
ハナム省はベトナム北部の紅河デルタ地方に位置し、省都フーリー(Phu Ly)市はハノイ中心部から南に59キロ(ハイウェイを利用すれば車で1時間弱)、ノイバイ国際空港まで車で約90分の便利なロケーションである。面積はベトナム国内でも最も小さい省の一つで860.5㎢。人口は79万人ほど。
ハナム省の工業団地
現在ハナム省内には9つの工業団地:
①ドンバンⅠ(Dong VanⅠ)工業団地、
②ドンバンⅡ(Dong VanⅡ)工業団地、
③ドンバンⅢ(Dong Van Ⅲ)工業団地、
④ドンバ ンⅣ(Dong Van Ⅳ)、
⑤ホアマック(Hoa Mac)工業団地、
⑥チャウソン(Chau Son)工 業団地、
⑦タンリエム(Thanh Liem)工業団地、
⑧タイハ(Thai Ha)工業団地、
⑨キムバン(Kim Bang)工業団地が存在する。
ハナム省政府としての取り組み
ハナム省は日系製造業の誘致に力を入れており、ドンバンⅢ工業団地は神奈川県とMOUを結び「神奈川インダストリアルパーク」の看板を掲げている。神奈川県の企業がドンバンⅢ工業団地に入居した場合は、賃料や管理費の減免などの優遇措置が受けられる。このドンバンⅢ工業団地は、全国に6カ所設置された政府認定の「裾野工業団地」の一つであり、裾野産業(SupportingIndustry)の誘致に力を注いでいる。特に同工業団地では各種部品や素材を製造する裾野産業およびハイテク製品製造企業を積極的に誘致している。ハナム省政府は神奈川県と協力して、日本で製造業の誘致セミナーを開催するなど、積極的な誘致活動を展開している。また、ハナム省は日本人スタッフが常駐するジャパンデスクを設置している。
ハナム省に進出している日系製造業
ハナム省に進出している大手の日系製造業としては、ホンダ・昭和電工(ドンバンⅡ)、富士電機・YKK(ドンバンⅢ)などがあるが、その他多くの中小企業が進出している。特にゴムやプラスチックなどの業種は、最近廃棄物に関する審査が厳しくなり、環境申請の関係でライセンス取得が容易ではないが、ハナム省では取得が可能な場合もあるので、そのような業種の企業にとっては有難い。進出を考えている企業は直接工業団地や、進出コンサルタントに相談されることをお勧めする。
ハナム省の住宅事情
日本の総合不動産業「富士グループ」が独資100%で、ドンバン工業団地の一角に建設した日系サービスアパート「FAMILLE HA NAM(ふぁみ~ゆハナム)」は施設内には「プール・BBQコーナ―」、「テニス・フットサルコート」、「温浴施設(サウナ付き)」、「ゴルフ打球練習場」、「レンタルオフィス」、「レジャー棟」などが完備され、駐在員にとって快適な生活環境が整っている。また、この「ふぁみ~ゆハナム」にはレンタルオフィスも併設されているので、進出時に現地法人ができるまでのつなぎのオフィスとしても利用が可能だ。
ハナム省は省政府が日系企業(特に裾野産業)の誘致に力を入れているばかりでなく、工業団地以外にも民間の投資が活発に行われているので、これから益々発展する注目すべき地区だと思われる。また上述のように駐在員向けの住居などの日本人駐在員にとっての生活環境も整っており、ハノイやホーチミンといった大都市に駐在する場合と比較すると、かなりのコストを削減できる。
齊藤公(さいとうひろし)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。