ベトナムの
工業団地事情
文/齊藤公
第27回 FDI (外国直接投資) 受け入れに熱心な省 _ビンディン (Binh Dinh)省
製造業がベトナムに進出する際に、どの地域の工業団地を選択するかは重要なポイントとなるが、地域を挙げてFDIの受け入れに熱心に取り組んでいる省がある。前回のハナム省に続き、今回はベトナム中南部のビンディン省の状況をご紹介する。ビンディン省には食品加工業、飼料生産業、木材加工業、家具生産業、縫製業などが多く進出しているが、採石場があるので、墓石やタイルなどの石材加工業の進出も見られる。
ロケーション/面積/人口
ビンディン省はベトナム中南部に位置し、東側は南シナ海に接している。省都はクイニョンで、海に接しているため 近海で採れるシーフードが有名だ。面積は 6,067㎡で人口は155万人ほどで、労働力比率は55%。
ビンディン省の工業団地
現在ビンディン省には8つの工業団地:
①フータイ (Phu Thai) 工業団地、
②ロンミー (Long My) 工業団地、
③ニョンホア (Nhon Hoa) 工業団地、
④ニョンホイゾーンA (Nhon Hoi Zone A) 工業団地、
⑤ニョンホイゾーンB (Nhon Hoi Zone B) 工業団地、
⑥ホアホイ (Hoa Hoi) 工業団地、
⑦ベカメックスVSIPビンディン (Becamex VSIP Binh Dinh) 工業団地、
⑧カットチン (Cat Trinh) 工業団地が存在する。
ビンディン省の特徴と省政府としての取り組み
ビンディン省は天然資源に恵まれており、同省からの主な輸出品目として花崗岩、加工された木材、ユーカリチップ、冷凍海産物、燕の巣などがある。ビンディン省にあるクイニョン大学は2018年に「日本語・日本文化センター」を開設し、ビンディン省とクイニョン大学が合同で日本で企業誘致セミナーを開催するなど、省が一丸となって日系企業の誘致に積極的である。2020年1月からフーカット (Phu Cat) 空港が国際空港となり、韓国に直行便を飛ばしていて、将来的には日本にも直行便を飛ばす計画があるとのこと。またクイニョン港は2025年には取扱量を年間1,500万トンに増やすように取り組んでいる。
進出している日系製造業
ビンディン省に進出している日系製造業としては、Able (縫製:フータイ工業団地)、Marubeni Lumber (木材加工:ニョンホイ工業団地)、Fujiwara (太陽光発電:ニョンホイ経済特区)などがある。
住宅事情
外国人の長期滞在者向けのCondotel (コンドミニアムとホテルの融合形態)がクイニョン市内にあり、快適な住環境が手に入れられるので、日本人駐在員も困らない。また、ホーチミン・ハノイ・ダナンといった大都市と比較すると賃料が格安なので、駐在員のコストをセーブできる。
レストラン事情
日系ゼネコンのTDC (Vietnam Total Construction Co., Ltd.) が運営する「昇 (SHO) ジャパニーズレストラン」がクイニョンにあり、寿司や海鮮をメインとした本格的な和食がリーズナブルな価格で楽しめる。
総括
ビンディン省は前述のように花崗岩や木材、海産物などの資源が豊富で、国際港であるクイニョン港が貨物取扱量拡大を目的に、施設とサービスの更なる充実のために投資を行っており、輸出の拠点としての環境が整っている。また、大学が日本語人材の育成に力を入れており、省政府としても日系企業の誘致のために、日本の各都市と友好関係を促進し、セミナーを毎年開催している。日本語人材の採用や進出コストの削減など、日系企業が進出しやすい条件が整いつつあるので、今後の日系企業の進出増加が見込まれる。
齊藤公(さいとうひろし)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。