ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第5回「日系企業の投資動向」

去る9月27日にベトナム北部のフンイエン省で開催された、フンイエン省の省政府主催の「日系企業向け投資セミナー」におけるジェトロ・ハノイ事務所の中島所長のプレゼンテーションの要約をお伝えしたい:

  1. ASEAN各国GDP成長率:2023年度の予測ではASEAN 10か国の中で、べトナムがフィリピンと並んで 6.0%と首位に立っている。
  2. 日本企業の事業拡大方針:日本本社の考える今後の事業拡大先として、ベトナムは米国の29.6%に次ぐ26.5%と2位の座にある。ちなみにASEANの中ではタイが18.0%、インドネシアが13.3%となっている。
  3. 各国日系企業の今後1~2年の事業展開方向性:今後事業拡大を考えている日系企業の割合では、トップのインド(72.5%)、2位のバングラディッシュ(71.6%)に次ぎ、ベトナムは3位(60.0%)となっている。
  4. ベトナムにおける市場成長への期待
    1. B2B:企業間取引の拡大。地域的拡散。販売機能の拡大
    2. B2G:南北高速道路は25年開通を目指す。ハイフォンでは国内最大の非関税区着工。LNG導入、再生エネルギー、アンモニア、水素など新技術で脱炭素化推進。行政のオンライン化、公共施設のDX
    3. B2C:コロナ明けからMUJI、マツキヨ、ABCマートなどが新規進出。イオンモール(6店舗)・ユニクロ(17店舗)は更に拡大する計画。ECの市場規模は実店舗の1/10。日本食店は推計で全国2,500店舗に増加中。所得向上に伴い畜産物・酒類の消費量が増え、米・野菜の消費量は減少。健康・安全志向も高まる

5. まとめ/今後の経済・投資を見る上でのポイント

  1. 国内経済:経済はやや改善の兆し。低成長が続くが、大きな落ち込みにはならず、緩やかな成長は維持。生産活動、対面サービス、観光、IT・デジタルは安定
  2. 貿易、海外市場:ベトナムは「世界の工場」の一角を担う。中国からの部分移管・受託生産も引き続き堅調。世界景気の回復と共に反転も早い?(特に消費財)
  3. 直接投資:半導体、医療機器、EV関連、物流、データセンターなど新分野の投資が増える見込み。地方の高速道路・工業団地の開発が進み、「近くなった地方」のイメージから、地価が安い地方への進出が見込まれる。工場内・社内DXが進むと思われる。
JETRO Hung Yen Presentation
JETRO Hung Yen Presentation

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。