Viet Nam

工業団地の状況

Text by Saito Hiroshi

第50回 ベトナムにおける消防法の改正点について

1. 新・消防予防・消火・救助法(Law on Fire Prevention, Fighting and Rescue 2024)が施行(2025年7月1日)

この法律(No. 55/2024/QH15)は、旧来の消防法(2001年制定+2013年改正等)を全面的に改正・置換し、新たな法体系として施行された。

  • 主な変更点(旧法との違い)

対象・責任の拡大と明確化

  • 消防予防・消火に関する個人・法人(建物所有者、管理者、事業者等)の責任がより明確に規定された。
  • 火災予防だけでなく、救助活動(rescue)についても法的に包括的に位置づけられた

行政手続きの簡素化・効率化

  • 従来の37あった消防に関する行政手続きが約9件に削減され、申請・承認が簡略化(手続き負担軽減)。

社会全体の参加促進

  • 国家・地方政府だけでなく、市民・企業・コミュニティの消防安全への参加が強く促進される仕組みになった。

2. 消防安全管理対象の拡大(政令105/2025等による規定)

📌 拡大した対象

新しい政令(例:Decree No. 105/2025/ND-CP等)により、火災安全管理対象となる施設・事業が拡大した。

  • 政府機関オフィス、
  • データセンター、研究施設、
  • 多目的用途ビル(2階以上または100 m²以上)
  • 可燃物倉庫などの対象が追加されている。

旧来は管理対象が限られていたが、新法・新政令でより広範なカテゴリーの建物・設備が対象となっている。

3. 火災予防設備/情報通信システムの新義務化

🔔 情報・早期警報システムの整備

  • 新法・政令では、対象施設は火災警報・通信システムを設置し、国家データベースと連携させることが義務付けられている。

旧法ではこうしたデータ連携・情報システム整備についての法的明記が弱く、実務運用に差があった。

4. 罰則・行政処分の強化(Decree 106/2025/ND-CP)

新たな政令により、消防法違反に対する罰金額や行政処分が大幅に引き上げられている:

  • 訓練未実施・担当者未教育:従来数百万VND6–8 百万VNDへ引上げ(加えて再訓練義務付けなど)。
  • その他の違反に対しても、重大リスク行為の罰金上限が引き上げられている。

また、特定行政機関(例:地区人民委員会や地区警察長)の罰則権限が整理され、権限分割も変更されている。

5. 装置・設備の検査要件の変更

  • 従来、耐火扉や区画壁などの構造部材には検査証明が必要とされたのに対し、最新の政令ではこれら検査要件が一部不要または変更されるケースが出ている。

これは、検査対象・範囲を合理化し、現実的運用へ調整したものと考えられる。

6. 集合住宅・複合用途ビルに対する新たな安全要件

  • 住宅・商業用途の複合建物について、**より詳細な火災安全条件(標識、火災拡散防止措置、ガス漏洩検知設備など)**が新たに求められている。

従来は一般住宅と商業用途の管理が曖昧な面があったが、これが明確化・強化された。

7.まとめ(改正のポイント)

 

項目

 従来

 改正後

法体系

 2001年法+改正

 2024年新法(20257月施行)で全面刷新

対象拡大

 一部施設中心  

 データセンター等多数追加

手続き

 手続繁雑

 大幅簡素化(手続削減75%超)

罰則

 比較的軽い

 罰金強化・義務化多数

技術要件

 一部義務化 

 通信・早期警報システム義務化

救助規定

 明示無し

 救助活動を法律に明確規定

齊藤公(Saito Hiroshi)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。