ベトナムの

工業団地事情

文/齊藤公

第2回 各種ライセンスの取得について

ベトナムで外国人投資家が会社を設立する場合には、投資登録証明書(IRC: Investment Registration Certificate)を取得し、その後に企業登録証明書(ERC: Enterprise Registration Certificate)を取得するという2段階での証明書の取得が必要になる。この2種類の証明書取得後に、税コードの登録及び社印の登録・公告手続きが必要になる。これらの証明書の申請を始めとする法人設立のための一連の手続きは、工業団地の管理会社が代行してくれる所もあるが、そうでない場合は代行してくれるコンサル会社、会計事務所、弁護士事務所等に依頼しなければならない。

1. 投資登録証明書(IRC)

1)投資計画申請書

2)現在事項全部証明書=登記簿の公証写し(投資家が組織の場合)パスポートの公証写し(投資家が個人の場合)

3)投資案件の提案書(投資家名、投資の目的、投資規模、投資資本などの内容を含む)

*具体的には下記の内容を含んでいなければならない:

A. 向う3年間の生産能力

B. 向う3年間の収支見込

C. Investment Capital(投下資本):今後投下する見込みの全ての資本金の合計金額

D. Charter Capital(授権資本):IRCが発給された日から90日以内に、実際にベトナムの銀行口座に振り込まなければならない資本金

●授権資本は現金以外にも、設備、道具、テクノロジーで出資することが法律で認められているが、これらの財産の価値を証明するガイドラインがないため、現金以外の出資の場合は、審査に時間が掛かりプロジェクトの遅延を招く可能性がある。

<注>上記の投下資本と授権資本の差額が、銀行から長期ローンで借り入れる際の枠になるので、注意が必要。

 

  • 例えば:投下資本が5千万円で授権資本が1千万円の場合は、銀行から借り入れができるのは、その差額の4千万円となる。
  • 通常は投下資本に対する授権資本の割合は20%程度が適当と考えられる。

  E. 製造工程を示す写真入りのチャート

  F. 製造過程で使用する薬品のリストとそのSafety Data Sheet

4)投資家の直近2期分の決算報告書の公証写し

5)銀行残高証明書の公証写し

  • 授権資本を現金で出資する場合は、銀行残高が授権資本以上の金額でなければならない。

6)工業団地との契約書(土地購入契約書、またはリース契約書)

★上記の書類を日本の公証役場で公証後、日本のベトナム大使館(またはベトナム領事館)で認証してもらい、それをベトナムの公証役場で公証してもらう必要がある。上記の書類に不備がない場合は、通常書類提出後15営業日でIRCが取得できる。

2. 企業登録証明書(ERC)

企業登録証明書(ERC)

IRCを取得後にERCの申請をする必要がある。IRCに記載された企業登録番号が税コードになる。ERCの申請には下記の書類が必要になる。

1) 企業登録申請書

2)会社の定款の公証写し

3)株主名簿の公証写し

4)IRC

5)投資会社の法的代表者のパスポートの公証写し

6)現地法人の法的代表者のパスポートの公証写し

★上記の書類もIRCと同様に日本で公証・認証後にベトナムの公証役場で公証してもらう必要がある。上記の書類に不備がない場合は、通常書類提出後3営業日でERCが取得できる。

3. 税コードの登録及び社印の登録・公示

ERCに記載された税コードと社印を、事業登録庁に登録しなければならない。また社印は国家事業登録システムに公示しなければならならない。この手続きは下記のリンクからオンラインで申請できる:https://dichvuthongtin.dkkd.gov.vn/authPublic/LogOn.aspx?ReturnUrl=/inf/default.aspx

上記の1.~3.の手続きを経て、無事ベトナムの現地法人設立手続きが完了する。但し、製造業でもその業種・生産品によっては、ライセンスが下りない場合もあるので、まずば入居を予定している工業団地の管理会社に、ライセンス申請が可能かどうかを確認する必要がある。特に最近ベトナム政府は廃棄物に関しての規制を厳しくしているため、メッキ加工や染色過程を含む製造業に関しては、ライセンスの許可が下りない場合がある。

齊藤公(さいとうひろし)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。