ベトナムの
工業団地事情
文/齊藤公
第33回 FDI (外国直接投資)受け入れに熱心な省_バクニン (Bac Ninh省)
製造業がベトナムに進出する際に、どの地域の工業団地を選択するかは重要なポイントとなるが、地域を挙げてFDIの受け入れに熱心に取り組んでいる省や市があるので、その例をいくつかご紹介したい。今回は電気・電子関連企業が多く進出しているハノイ郊外のバクニン省の状況をご紹介する。
1.ロケーション/面積/人口
バクニン省は南西をハノイ市、北をバクザン省、南をフンイエン省に接している。省都バクニン市はハノイ市中心部から東北30kmに位置する。面積は約823㎢で全国でも最も面積の小さい省である。人口は約149万人
2.バクニン省の工業団地
現在バクニン省には19の工業団地:
① VSIPバクニン(VSIP Bac Ninh Integrated Township & Industrial Park)工業団地、
②ダイドン・ホアンソン(Dai Dong-Hoan Son)工業団地、
③クエボー(Que Vo)工業団地、
④クエボーⅢ(Que VoⅢ)工業団地、
⑤イエンフォン(Yen Phong)工業団地、
⑥イエンフォン2C(Yen Phong 2C)工業団地、
⑦クエボーⅡ(Que VoⅡ)工業団地、
⑧ティエンソン(Tien Son)工業団地、
⑨ナムソン・ハップリン(Nam Son-Hap Linh)工業団地、
⑩トゥアンタン(Thuan Thanh)工業団地、
⑪トゥアンタンⅡ(Thuan Thanh Ⅱ)工業団地、
⑫ダイキム(Dai Kim)工業団地、
⑬ハナカ(Hanaka)工業団地、
⑭ザービン(Gia Binh)工業団地、
⑮VSIPバクニンⅡ(VSIP Bac Ninh Ⅱ)工業団地、
⑯トゥアンタンⅢゾーンA(Thuan Thanh Ⅲ Zone A)工業団地、
⑰トゥアンタンⅢゾーンB(Thuan Thanh Ⅲ Zone B)工業団地、
⑱ザービンⅡ(Gia Binh Ⅱ)工業団地、
⑲イエンフォン2A(Yen Phong 2A)工業団地がある。
3.バクニン省の特徴
バクニン省は中国との国境地帯にあり、中国と鉄道でつながっていて、高速道路・国道が整備されノイバイ国際空港からのアクセスも良く、交通の便に恵まれているので、ベトナムを代表する物流拠点となっている。中でも2014年にハノイ市からバクニン省を経由してタイグエン市と結ぶ「ハノイ~タイグエン高速道路」が開通したことにより、それまで片道2時間以上掛かっていたのが約1時間に短縮された。
4.進出している日系製造業
バクニンに進出している主な日系製造業としては、キヤノン、東洋インキ(クエボー工業団地)、エースコック、住友電工(ティエンソン工業団地)、フォスター電機、サントリー(VSIPバクニン工業団地)などがある。
5.生活環境
1)住宅事情:前述のようにバクニン省の工業団地はハノイ市から通えるので、ハノイ北部のバクニン省へのアクセスのよいBa Dinh(バーディン区)のアパートがお勧めだ。バーディン区には多くの外国人向けサービスアパートがあり、日本大使館も同区にあるので便利だ。
2)レストラン事情:バクニン省にはそれほど多くの日本食レストランはないが、VSIPバクニン内には、ハノイ市内にもある居酒屋風の日本食レストラン「たま弥」があり、近隣の工場に勤務している日本人で昼夜賑わっている。
6.まとめ
バクニン省はその地理的優位性からサムスン電子、キヤノン、住友電工などの外資大手の電気・電子関連企業が進出している関係で、それらの企業に部品を供給している裾野産業も多く進出している。同省周辺の高速道路網が充実しているので、ハノイ市からの通勤圏であるし、ノイバイ国際空港までも車で30分前後、中国との国境までも車で2時間半前後という抜群のロケーションのため、物流コストの削減が可能で外資系企業に人気が高く、今後も新規の進出が見込まれる地域である。
齊藤公(さいとうひろし)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。