
Viet Nam
工業団地の状況
Text by Saito Hiroshi
第52回 投資法の変更点
今回は昨年7月に改訂されたベトナムの投資法について、主な変更点と、その変更に伴う実務への影響・留意点について
一覧表でご説明したい。
| 項目(根拠条文) | 現状・旧法(2020年法) | 変更後・新法 | 実務への影響・留意点 |
| 1. 条件付き投資業種の整理 | 対象業種は228業種(2025年7月改正時最大234)。 | 対象を198業種へ削減(※暗号資産・個人データ関連は規制を継続)。 | 2026年7月1日適用開始。 |
| (第7条・付録IV) | 投資や事業活動を開始する前に、特定の分野において許可や認証の取得を必須とする管理方式。 | 許可や認証に代わり、事後検査管理のための事業要件や条件を公表。要件を満たしていれば営業可能とし、当局が事後的に確認を行う方式への転換。 | 許可を取ってから営業という流れから、自己責任に基づく要件遵守が主体となる。企業側は、当局の事後検査に耐えうる社内コンプライアンス体制の整備がこれまで以上に重要となる。 |
| 2. 特別投資優遇措置 | ハイテク活動やエネルギーなど、従来の一般的な優遇枠組み。(右図が一覧) | イノベーションセンター、R&D、デジタル技術、半導体、AI関連等への特別優遇枠組みを新設。 | 詳細は法人税法および土地法の下位法令にて規定されるため、今後の公布を待つ必要がある。 |
(第17条) |
| 3. 会社設立の手続順序 | IRC(投資登録証明書)取得後に、ERC(企業登録証明書)を取得することが必要だった。 | IRCを待たずに、先に会社設立(ERC取得)が可能に (※外資規制をクリアしている業種であることが条件) | 口座開設や人員採用が早期化可能。ただし施行細則待ちであり、IRC未取得状態が長引くリスクを避けるため手続の並行稼働が必須。 |
(第19条) |
| 4. 投資方針承認の対象 | 承認権限者ごとに条文を分けて対象プロジェクトを規定。誰が承認するかごとに条文がバラバラに書かれており、対象プロジェクトの全体像が分かりにくかった。 | 「どんなプロジェクトに承認が必要か」を20のカテゴリー(大規模土地使用、大型インフラ等)にまとめて1つの条文で一覧化。 | 承認対象となるプロジェクト要件が1箇所に一覧化されたことで、事前の調査や計画立案時の見落としリスクが減る。 |
(第24条) |
| 5. 承認権限の再編 | 省人民「委員会」(組織としての権限)などが承認。 | 承認権限を以下の4つに整理・明確化。① 国会② 首相(8カテゴリー)③ 省トップの個人決裁(省人民委員会主席)(13カテゴリー)④ 各管轄エリアの管理委員会 | 地方レベルでの承認が、合議制の「委員会(組織)」からトップの「個人決裁」へ移行するため、意思決定や手続きのスピードアップが見込まれる(※具体的な手続方法は今後の政府規定待ち)。 |
(第25条) |
| 6. 特別投資手続の新設 | 経済特区や工業団地内であっても、環境影響評価、建設許可、消防など、一連の許認可手続きを個別に経る必要がある。 | 工業団地やハイテク区等におけるプロジェクト(投資方針承認が不要な場合)において投資家が法的基準の遵守を確約することで、技術評価や環境影響評価などの一連の手順を免除できる。 | 審査なしで早く進められる代わりに、ルール違反が後から発覚した場合は全責任を負うというモデルへの転換。 着工前に、社内の技術・環境チームで基準適合を確認し、法令遵守を担保する体制が必要となる。 |
(第28条) |
| 7. プロジェクト変更承認の要件 | 進捗遅延は「12か月超」。土地面積変更は「10%または30ha」の要件あり。総投資資本の20%以上の変更、およびすでに評価された技術の変更を行う場合は、プロジェクト調整の承認手続きが必要。 | 再承認が必要な条件が「目的・土地・24か月超の遅れ・期間・投資家」の5つに限定。 | どの変更なら面倒な再承認が必要か、が明確になり現場での判断がしやすくなった。また、工期遅れの猶予が2年に延び不可抗力などの例外ルールも明記されたため、予期せぬトラブル時にも柔軟な対応が可能になる。実施中に資本が変動しやすいプロジェクトにおいて、不要な行政手続きを回避できるようになる。 |
(第33条) | スケジュール遅れの猶予期間を「24か月」に延長。 | ||
「総投資資本の20%以上の変更」および「評価済み技術の変更」の要件を削除。 | |||
土地面積変更の10%/30ha要件を撤廃。 |
| 8. 投資プロジェクトの運営期間の規定 | 上限50年(経済特区であれば70年)。 | 上限はそのまま、延長に加えて短縮も可能に。 | 製造業などで長年設備投資を怠っていると老朽技術とみなされ、期間延長が拒否され事業継続ができなくなるリスクが生じるため、期間満了の数年前から計画的な設備のアップデートや環境対策のレビューを行うことが必須。 |
(第31条) | 活動期間の延長のみ規定。 | 老朽化技術使用・環境汚染リスク等がある場合は延長不可と明記。 |
総括;以上のように手続き自体は簡素化され、承認までの期間が短縮されているが、事後検査によって違反が発覚した場合に
責任を追及され罰金を請求されるリスクがあるため、従前以上に法令順守が求められている。

齊藤公(Saito Hiroshi)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。

