Viet Nam

工業団地の状況

Text by Saito Hiroshi

第44回 ベトナムのビザと労働許可制度 

最近労働許可証の認可に要する期間が短縮された。今回は改めてビザと労働許可の関係や、ビザの種類及びその取得方法・所得までの期間等についてご説明したい。

1.ビザと労働許可の関係性

まず押さえておきたいのは、ビザと労働許可は全くの別物の制度であるという点である。ベトナムでの滞在や就労を計画する日本人駐在員にとって、ここを混同することは大きなリスクにつながる。

・ビザ:入国・滞在資格を付与するものであり、短期滞在から長期居住まで目的に応じた種類が存在する。

以下の画像は、ビザの種類に含まれるTRC(テンポラリーレジデンスカード)であり、労働許可を取得した後、基本的に同期間分取得することができる。

労働許可(Work Permit, WP)

・労働許可(Work Permit, WP):ベトナム国内で合法的に働くために必要な許可証であり、ビザとは完全に別の手続きが求められる。

労働許可

よくある誤解として「労働許可申請中ならビザは延長される」と考えるケースがあるが、これは誤りである。労働許可申請中の場合でも、ビザの期限が切れればオーバーステイ扱いとなり、罰金や強制出国のリスクが発生する

また、銀行口座開設や給与振込においても労働許可は重要である。労働許可がない状態で企業から個人口座に給与が振り込まれると、銀行側が入金を一時停止し、労働契約や労働

許可の提出を求めるケースがある。したがって、駐在員にとってビザと労働許可は非常に重要であり、どちらが欠けてもスムーズな生活と業務遂行は不可能である。

2.日本人駐在員が利用する主要なビザの種類とその特徴

労働許可

・ノービザ免除

日本国籍保持者は45日間までビザなしで滞在可能。ただし延長は認められず、短期の観光や現地視察などに限定される。

・Eビザ(電子ビザ)

最大90日間の滞在が可能。オンラインで取得可能なため利便性は高いが、延長は不可。観光や短期ビジネス出張に活用される。

・ビジネスビザ(DNビザ)

最大90日間の滞在が可能。延長も認められるが、スポンサーとなるベトナム企業の申請が必須である。取引先訪問や現地での打合せなどに利用される。

・労働ビザ(LDビザ)

労働許可の期間に応じて発給される。就労を前提としたビザであり、必ず労働許可とセットで取得する必要がある。

・テンポラリーレジデンスカード(TRC)

最長2年間の滞在が可能な長期ビザで、労働許可や長期滞在資格を前提に発給される。事実上、駐在員が最も多く利用する滞在資格である。

このように、ビザごとに「滞在可能期間」「延長の可否」「スポンサーの要否」が異なり、特に長期駐在を予定する場合には、TRCの取得が最も安定した選択肢となる。

3.家族帯同ビザとその制限

駐在員本人だけでなく、その家族の滞在資格も実務上は極めて重要である。ベトナムの制度では以下のようなルールが設けられている。

・配偶者:駐在員が労働許可を持っている場合、配偶者はTRCを取得可能

・18歳未満の子ども:TRCを申請・取得できる。学校生活や安定した滞在環境を確保するために不可欠である。

・18歳以上の子ども:成人扱いとなるため、TRCは取得できない。この場合は6か月ごとに更新が必要なVRビザを利用するのが一般的となる。

4.新制度化での取得プロセス

新政令によってビザと労働許可の取得プロセスは従来よりも簡素化された。

ここでは典型的な取得パターンを二つ示す。

①:渡航前に許可を整えてから入国する場合

1.採用広告 (5営業日)

2.雇用許可・労働許可申請 (申請受理から10日以内)

3.Eビザ90日取得、TRCに切り替え (5営業日)

4.ベトナム入国後、TRCに切り替え (5~7営業日)

この方法は確実性が高く、入国後に不安定な立場に置かれるリスクを減らせる

②:渡航後に労働許可を申請する場合

1.ビザレターを利用してビジネスビザ90日を取得し入国

2.採用広告 (5営業日)

3.労働許可申請 (申請受理から10日以内)

4.TRC (約2年) に切り替え (5~7営業日)

 

この場合、日本でしか取得できない書類(学位証明書、犯罪経歴証明書など)必ず渡航前に準備し、ベトナム現地で用意できる書類(健康診断書など)と分担して整えることが求められる。

5.総括

ベトナムでの滞在、就労をスムーズに行うには、ビザと労働許可を常にセットで考えることが必要不可欠である。

齊藤公(Saito Hiroshi)

Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd

大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。