
ベトナムの
工業団地事情
文/齊藤公
第36回 ベトナムの工業用不動産事情
1. 土地の購入について
ベトナムに製造業が進出する際には、通常は工業団地の土地を購入して自社工場を建設するか、既存のレンタル工場に入居するかの二者択一となる。但し、ベトナムは中国と同じく社会主義国のため、外国人が土地を永久に購入できるわけではなく、土地の借地権(最大50年)を購入するということになる。この50年というのは、その土地が産業用地のライセンスを取得した時点から換算されるため、ホーチミン市南部のタントゥアン(Tan Thuan)工業団地のような古くから開発された工業団地では、既に残存期間が16年しかない工業団地もあるので、注意が必要である。
通常はこの50年の土地の借地権が満了になった場合は、新たに50年の産業用地としての借地権が与えられる場合が多いが、前述のタントゥアン工業団地のように、市街地に隣接している工業団地の場合は、産業用地から商業用地(ショッピングセンターやアパート用の用地)に変更される可能性もあり、残存期間の確認は重要である。

2. 土地価格の南北における格差
下記の一覧表のように、工業団地の土地価格は北部と南部で格差があり、南部ではホーチミン市周辺の産業用地が少なくなったこともあり、ここ数年で価格が急騰して北部の5割増し以上となっている。特にホーチミン市近郊のドンナイ省、ビンズオン省、ロンアン省などの工業団地の土地価格は軒並みUSD200~300/㎡という価格帯であるが、北部では最近開発されたフンイエン省のEcoland工業団地でもUSD140/㎡という価格であり、USD200/㎡を超える価格帯の工業団地は現時点ではない。
★ドンナイ省のA工業団地では、20年前の土地価格がUSD20/㎡であったが、現在はUSD200/㎡と10倍の価格になっている。
★ロンアン省のL工業団地は16年前の土地価格がUSD40/㎡であったが、現在はUSD280/㎡と7倍になっている。
⇒ 住宅用地や商業用地の土地価格は景気によって上下に変動するが、工業用地の土地価格は景気が後退しても下がることは無い。

3. 総括
ベトナムで製造業として進出する場合は、インフラ整備や環境保護の問題もあり、現在では工業団地内の土地を購入して自社工場を設立するか、工業団地内のレンタル工場に入居するかの二者択一で、工業団地以外の土地に工場を建設することは許可されていない。最近の傾向としては、まずはレンタル工場に3~5年程入居して、ある程度採算が取れる見通しが立った段階で、そのレンタル工場の近くに土地を購入して自社工場を建設するというパターンが多い。いきなり土地(の借地権)を購入して自社工場を建設すると、初期費用が莫大になるばかりではなく、転売が容易ではないため、万が一撤退となった場合に大きな負債を抱えることになるリスクがある。

齊藤公(さいとうひろし)
Business Advisor
G.A. Consultants Vietnam Co., Ltd
大学卒業後に PHP 研究所に入社し、同社ニュー ヨーク事務所長を務めた後、中部日本放送(CBC) の関連会社で「名古屋港再開発プロジェクト」を 担当。その後拠点をアジアに移し、シンガポールで 「FM96.3」の開局や、ベトナムで「ハローベトナ ム」・「インベストアジア」の創刊を手掛け、ベトナム 最大規模のレンタル工場開発会社(BW Industrial Development JSC)で日系製造業の誘致を担当後、 現在はベトナム最古参の日系人事コンサルタント会社 「G.A. Consultants」にて、日系企業の進出コンサ ルタントとして活動。

